中国を理解する上で避けて通れないのが、戸口(hukou)と言われる戸籍制度。日本にも戸籍はあるが、日常生活で意識をすることはない。本籍地を好きな場所に指定でき、一番多い本籍地のは東京都千代田区千代田1番の皇居というのどかな制度。それに比べて中国の戸籍は日常生活のあらゆる面に影響を及ぼしている。1950年代に農村から都市への人口移動を制限するために導入されたそうだが、今でも就労・就学の自由を制限することで移動の自由を制限する仕組みになっている。
例えば上海の戸籍を持っていないと、仮に上海に引っ越してきても行政サービスが受けられないそうだ。上海の公立学校はレベルが高いと評判だが、上海戸籍の子供しか通えない。上海の戸籍がない子供はどうするのか?戸籍がない子供が通う学校があるそうだ。医療でも、上海の戸籍がない人が上海の病院に行くと全額自己負担になるらしい。上海の戸籍があれば、半額程度は医療保険の補助がある。上海戸籍がないと、上海の不動産も購入できない。行政、教育サービスが一番発達しているのが北京や上海、杭州、深圳という4つの1級都市。ここから5級都市までランクがあり、この人たちは都市戸籍。さらに、農村戸籍もあるらしい。日本では親ガチャというが、中国では戸籍ガチャ。生まれた場所(戸籍)で、その後の将来が大きく影響されてしまう。
戸籍を変える方法はあるのか?一つは結婚。しかし、偽装結婚を防ぐために、仮に上海戸籍の人と結婚してもすぐにはもらえない。10年かかるのかな?あとは学歴。上海も優秀な人材は欲しいので、例えば復旦大学のような上海の名門大学で大学院を卒業すると、博士なら自動的に戸籍がもらえるそうだ。修士+上海での勤続年数でもOKかな?上海の知り合いの奥さんは、南部の南寧市の出身。南寧市も各省や自治区の省都にあたる二線都市だから、広い中国の中での戸籍ガチャでは当たりくじ。そこから勉学優秀で復旦大学の修士卒業して上海で就職。めでたく上海の戸籍に切り替えることができたそうだ。戸籍すごろくの頂点に位置するのが上海・北京であり、子供に引き継ぐことができる。
広い中国では、戸籍がまるで国籍のようなイメージだと感じた。日本から外国に移住するには学歴など、なぜその国に自分が必要なのかをアピールする必要がある。戸籍を切り替えるチャンスは少ない。結婚のような他力本願ではなく、自力で切り替える唯一のチャンスが大学受験。だから受験が過熱するし、親も子供の教育を全てに優先させる。戸籍制度を理解することで、中国人の行動をよりよく理解できた気がする。