ビットコインを買う企業

最近の適時開示情報を見ていると、「ビットコインを購入します」という発表が多いことが気になっている。例えば8月25日、186件の適時開示のうち、ビットコイン購入に関するものが5つもあった。

8月18日には、熊本地震からの復興需要を見込んで投資したこともある、熊本本社の住宅メーカーLib Workが、5億円のビットコイン取得を発表していて、思わず笑ってしまった。さらに継続的に取得していく方針だそうだ。

本気でビットコインの未来を信じている経営者もいるのかもしれないが、大半は株価対策だろう。例えばLib Workの場合、株価は過去5年間横ばい。8月18日にビットコイン取得発表をわざわざ場中の昼12時に行い、瞬間的に株価を10%上昇させた点など、とてもせこいと思う。時価総額に占めるビットコイン比率が高まるほど、企業価値評価には事業の収益予想に加えてビットコイン価格予想が重要になる。ビットコイン価格は分からないと私のように手を出さない投資家も多い訳で、ビットコインを取得するというのは、ある種の投資家を遠ざけ、逆に別の種類の投資家を寄せ集めることになる。それが目的なの?

日本企業におけるビットコイン取得の成功例と言えば、メタプラネット。株価は2024年からピークの2025年夏までに100倍になり、2024年に世界の全上場企業で最も値上がりしたと会社自身が誇っている。自信があるなら大株主は株式保有を続けるのかと思いきや、2024年に大規模売却。会社の将来に自信はあるけど、一番よく内情を知っている自分たちは売りますっていうのも不思議な話。しかし、こういうシンデレラストーリーが出来てしまうと、真似した企業が出てきてしまうんでしょうね。

Air Canada(エア・カナダ)のストライキ

カナダの最大手航空会社、Air Canada(エア・カナダ)の客室乗務員がストライキを行っており、8月16日からほぼ全便が欠航しています。出張はもちろん、夏休みの終わりの時期で旅行先から帰って来れない人など、毎日700便、13万人に影響が出ているそうです。

日本で大規模ストライキは長らく起こっていないと思いますが、有名なものは1975年11月26日~12月3日の国鉄ストライキ。高度経済成長でインフレ率が高く、賃金上昇が物価上昇に追いついていなかったのでしょう。今回のカナダも含めて、インフレ環境が大規模ストライキの前提条件になることが多いと予想しますし、そうであれば、長らくデフレ環境でストライキがなかった日本でもストライキが増えてくるのかもしれません。

エア・カナダの前回の大規模ストライキは1998年のパイロット。この時は、11日間かかったそうです。今回は解決に何日かかるでしょうか?カナダでは、運輸など必需サービスに分類される業種については、政府がストライキ解除するよう通達を出せる法律があるそうです(Section 107 of the Canada Labour Code)。今回もエア・カナダ経営陣は政府に泣きつき、労働大臣もわずか数時間後にこの通達を発表。このスピードを見て分かるのは、通達発表が既定路線の出来レースだということです。今回が違うのは、客室乗務員の労働組合が通達を無視したこと。これまでエア・カナダ経営陣は、この通達頼みでストを突破してきた黒歴史があるそうで、これを許容しているとストの意味がなく、フェアな労働協議が実施されません。それはもう許さないという労働組合の強い姿勢を感じます。

オンラインに開示されていたエア・カナダの客室乗務員の給与明細(T-4)によると、年間給与は$3.5万ドル(約400万円)。どれくいらいの頻度でフライトをしているのか分かりませんが、さすがに安すぎると思います。オープンワークでJALの客室乗務員の平均年収が450万円とありますが、カナダの物価は日本の1.5 ~ 2.0倍です。

https://www.reddit.com/r/britishcolumbia/comments/1mqgl8k/how_much_an_air_canada_flight_attendants_actually/

8月17日(日)、ストライキの現場を見学するために、トロントのPearson空港に行ってきました。1万人が参加しているという規模感を感じることはできませんでしたし、空港に困った客が溢れかえっている訳でもありませんでした。

トロントでの不動産購入

トロントで賃貸暮らしですが、日本のバブル崩壊やアメリカのリーマンショックといった不動産価格が大きく下落した経験の少ないカナダ人は持ち家派が大多数です。不動産価格は上昇し続けると信じている人が多くて驚きます。そこで、不動産取得にはいくらかかるのか調べてみました。現在のトロント不動産市況ですが、戸建て(Detached home)の平均売買価格は$1.4M(約1.5億円)となっています。

不動産仲介費用は売り手持ちですが、代わりに不動産取得税がかかります。さらに頭金が20%以下の場合には住宅ローン保険への加入が義務付けられており、物件価格の2.8%になります。しかし、頭金3000万円を貯められる家庭がどれほどいるのでしょうか。親の援助などあれば別ですが、大多数の購入者は住宅ローン保険を利用していると予想します。費用を合計すると、物件価格の約6.5%になります。

その後の毎年の支払いはどうでしょうか?年0.75%の固定資産税と平均年0.75%の修繕費用がかかる前提で、毎年10万ドル。30年総額で320万ドルにもなります。さらに修繕に対して業者選定など時間を使う必要があります。物件価格が年率2%で値上がりすると仮定すれば、約100万ドルの値上がり益が期待できます。320万 – 100万 = 220万ドルは360カ月換算で月6000ドル。賃貸価格も値上がりするので、現在4500ドルの賃貸と140万ドルの物件購入が経済的には同等というイメージでしょうか?自分の時間を使う点や、変な隣人に当たっても引っ越せないリスク調整後は同等とは言えないと思いますが、そのあたりは価値観ですかね。