ノルウェー旅行 その3(ドイツの旅職人)

ノルウェーのFykseという小さな村の住人と話していたとき、自宅の改装を行っていて、ドイツ人職人を雇っていると聞きました。わざわざドイツから職人を呼んだのかと思ったら、「2人の職人とフェリーで知り合った」とか、「彼らはスマホを持ってはいけない」とか、「2年間の武者修行の間は故郷には帰れない」と聞いて、全く知らない世界に興味を持ちました。

あとで調べてみると、ドイツには「ヴァルツ」という旅修行制度があるそうです。ゲゼレという職人になったあと、3年と1日の旅修行を行うことで、マイスター(親方)に昇格できる仕組みで、800年以上の歴史があるそうです。

決まった仕事着を着ること(ベストにある8つのボタンは8時間労働、ジャケットの6つのボタンは週6日労働を意味する)、故郷から50キロ以内に立ち入り禁止、スマホ・パソコンの所持禁止(借りて使うことはOK)などなど、他人と交流して技術・人間性を高める工夫がなされています。今では旅修行を行う職人は全体の1%しかいないそうですが、私はこうした何百年も続く伝統が大好きです。中世から歴史の荒波を乗り越えてなお残っている制度には何か本質的な意味・価値があると思うからです。こうした伝統に身を預けること、伝統の一部になることには帰属意識と安心感があるのだろうなと憧れを感じます。

こちらのブログに、日本で旅修行していたドイツ大工職人との交流がまとめてありました。ご参考まで。

ノルウェー旅行 その2

ノルウェーで驚いたことの一つは、国民の英語能力の高さです。私の感覚では、これまで訪問した国で総合的に一番。しかも発音が聞きとりやすい。例えばドイツ人の多くは英語が上手ですが、訛りが強いです。

オスロについて買い出しに出かけたRema 1000という大手スーパー(Wikipedia)。時給3000円でもセルフレジはなく、20歳くらいの青年がレジ打ちしています。ノルウェー語で話しかけられたので、”Do you speak English?”と聞くと、”Do you need a bag? How would you like to pay?”と立て板に水。英語圏かと思うほどです。

旅行後半、フィヨルドに浮かぶサケの養殖場を見学したく、ノルウェー第二の都市ベルゲンから100キロほど離れたFykseという田舎町で民泊を利用しました。商店もないような、人口100人ほどの小さな村です。ちょうど近所で造園業をやっているおじさん(60歳くらいかな)が道具を借りにやってきていたので立ち話をしたのですが、そのおじさんも英語がペラペラ。高学歴ではなさそうだし、造園業というノルウェー人相手なローカルな仕事です。普段英語を使う機会は多くないと想像するので、なぜこんなに英語がうまいのか理解ができません。すっかり驚いてしまって、肝心の「どうやって英語を学んだのか?」という質問が出来ませんでした。

ノルウェーでは最近、上場企業に英語のみでの開示を認めるようになりました。日本企業が、日本語・英語の双方で開示することは増えてきましたが、英語だけでもOKって考えられますか?それほど英語の運用能力が全国民レベルで高い。人口が500万人しかいないから、外国と仕事をする必要性が高いことも一因でしょうが、人口が200万人とさらに少ないラトビアはそこまでではなかった。大人はソ連時代に教育を受けたからなのかな。

他の北欧諸国を回って英語力を比較してみることが楽しみです。

ノルウェー旅行 その1

9月上旬、初めてノルウェーに行ってきました。その感想を何回かに分けて記録したいです。初回は初印象から。それは、とてつもなく豊かな国だということです。きれいな公共交通機関。ゴミのない道路。最新の電気自動車が行きかう街中。アウディ、BMW、レクサス。中国系EVは少ない印象です。タクシーはテスラ。しかもオスロだけではなく、第2の都市ベルゲンから2時間ほど離れた田舎ですら、日本であれば軽トラと軽自動車が走りそうなリンゴ果樹園の横を、新型EVが次々に走っていくという何とも不思議な光景。

https://japan-europe.com/column/1933/

ノルウェーの最低賃金は約3000円。東京都が1226円ですから、物価水準は2.5~3倍。ニューヨーク市が約2500円、トロントは約1900円ですから、やはり高い。消費税率は25%と高いですが、ノルウェーはEV優遇政策で消費税なしで購入できるそうです。グローバルで均一な自動車価格に対して所得が高いわけですから、無理なく購入できるのかもしれません。日本では東京と地方都市には差を感じますが、ノルウェーでは地方の隅々にまで(オスロとベルゲンの間という限られた地域ではありますが)豊かさがいきわたっているような感覚が新鮮でした。

物価の比較としては、絵葉書を海外に送ろうと切手を買ったら1枚あたり39クローネ(約600円)と驚きの高さ。ぼったくられているのかと思わず公式サイトで確かめてしまいました(リンク)。確かにEU外は39クローネでした。日本ではハガキの航空便100円と驚愕の安さ。ちなみにカナダは約400円。物価水準の違いを考慮しても、日本が安すぎるのではないでしょうか。200円くらいが妥当かな。ノルウェーのガソリン価格は1リッター約300円。産油国だからと言って安売りはしません。東京で170円。

アメリカやカナダは物価が高いけど、高いわりに質が悪い印象を受けます。それに対してノルウェーは高いですが、質も伴っている気がして好印象です。

パターンの異なる社長交代に注目したい

上記の夢のような株価推移は、アシックスです。靴業界には巨人のNikeやAdidasがあり、新興のHokaやOnも伸びるなど、私にはなかなか5年後の未来を見通しづらい業界ですが、それでも社長交代をフォローすることの大切さを再認識させてくれる会社です。

三原さんは1929年生まれ。戦争を挟んで1959年に大学卒業。1960年に入社した生え抜きです。業績不振の責任を取って1996年に社長交代したそうです。高橋さんは1936年生まれ。1958年に大学卒業して入社した生え抜きです。和田さんは1942年生まれ。高校卒業して1961年に入社した生え抜き。そして尾山さんは1951年生まれで、創業者鬼塚さんの長女恵美子さんの旦那さん。

ここまではすべて鬼塚ファミリーと言ってよい面々ですが、尾山さんの業績不振で2018年に社長就任した廣田さんは三菱商事出身で元々アシックスとは何の関係もない方。ここからアシックスの快進撃が始まります。廣田さんは十分に稼いで来たでしょうし、アシックスを首になっても怖いものなし。まさにしがらみ無き改革を実行できる立場にあったのでしょう。こういう変化の香りの漂う社長交代には注意していきたいです。「社長交代のお知らせ」というリリースしか出ないので、一つ一つ丁寧に内容を見ていく努力が求められます。