コロナウィルス致死率の計算方法

コロナウィルスのことが気になって仕方がない。目下、最大のリスク要因だと思っている。私は、貿易量の増大、人的交流の拡大など、グローバル化は良いことだと思ってきた。例えば日中間で政治的対立が続こうとも、互いにサプライチェーンに依存する経済構造になっていれば、自分に跳ね返ってくるような相手を苦しめる政策はとりづらいだろうと思ってきた。相互依存が高まることが、最大の安全保障になると思ってきた。ところが、人的交流が活発故にウィルスの拡散も世界規模になってしまうとは、とんだ盲点だった。

Guggenheim InestmentsのCIO, Scott Minerdさんが書いたブログ投稿を紹介したい(リンク)。彼は、コロナウィルスのリスクが過小評価されていると主張していて、特に致死率の計算方法がおかしいと指摘している。多くのメディアでは、感染者6万人に対して、死者1400人であれば、1400 / 60000 = 2.3%で低いから、過度に心配しないように、という風潮だ。しかし、Scottさんが指摘するように、6万人を母数とすることは間違っている。6万人の中には、これから死亡するかもしれない人と、これから治癒すかもしれない人が含まれているからだ。正確な致死率を計算するなら、死亡した人 / (死亡した人+治癒した人)とするべきだ。

世界中の感染者数をチェックするのに便利なサイトはこちら。以下のテーブルに2月17日時点の情報をまとめてみた。すると、一般的に聞く致死率は、2.5%、上で説明した本当の致死率は14%ということになる。2.5%と14%では、死亡者の多くが高齢者だとは言え、リスクが全く変わってくる。

コロナウィルスと危機管理

日本のメディアを見ると、コロナウィルスのニュースが増えて来たと感じる。和歌山県の医師など、感染経路の分からない患者が出ていることは、危険な状態なのではないか。今回の日本政府の対応を見ていると、日本は危機管理が苦手だと感じる。日本人が気質として苦手なのかは良く分からないが、2011年の東日本大震災からの原発事故の記憶がよみがえる。

原発事故のとき、最悪のケースでは東京圏にまで放射性物質が降り注ぐ可能性があった。SPEEDAなど、情報を隠す政府。市民の不安を煽りたくないからという理由だったのかもしれないが、明らかに不安になるべき状況なのだから、そんな配慮は逆に迷惑だと思う。東京在住の外国人の友人は、原発事故の一報のあった次の日の始発の新幹線で大阪に避難していた。友人は、東京を脱出する人で新幹線に乗れないことを心配していたそうだが、実際にはガラガラで驚いたらしい。その翌日には、韓国に避難していた。確率が低いかもしれないが、起これば致命的なダメージを受ける可能性がある場合、ひとまず逃げることが正しい選択だと思う。まず過剰と思われても安全を確保してから、次の一手を考える方が良いと思う。

今回のコロナウィルス。致死率が低いようだが、正直良く分かっていない。最悪のケースは、実際には致死率が高く、日本国内で蔓延してしまうこと。まさに、確率は低いかもしれないが、起これば致命的なダメージを受けてしまう。期待値を計算している場合ではなく、まず厳しめの対応をとるべきだと思う。日本政府は武漢から日本人を帰国させる飛行機の手配が諸外国に比べて早かったが、帰国した人を隔離しなかったことに驚いた。検査も拒否して自宅に帰った人もいたと報じられていたが、むしろ国内に感染を広げてしまっているだけなのではないか。カナダでは、アメリカと同様にチャーター便は出すが、帰国者は2週間の潜伏期間の間、基地で隔離生活だ。アメリカやオーストラリアは早くから中国からの入国者を拒否した。確率は良く分からないが、起こると致命的なダメージを受けるかもしれない事態に際して、まず厳しめに対応するということが出来ている国と、出来ない国。この違いはどこから来るのだろう。

クルーズ船にしても、健康な乗員乗客まで感染者と缶詰にして感染を広げてしまった後に、下船させますと。。。いや、余計に感染を広げてしまっただけなのでは?台湾政府は、感染経路の見えない日本への渡航に「注意」を喚起している(リンク)。台湾としては当然の対応だろう。対応の初動が遅れてしまったために、今後他国からも日本に対して渡航禁止令が出るかもしれない。日本は列車ダイヤなど平常時運転が大の得意だが、その反動として、こうした非常事態の危機管理が苦手だということなのだろうか。大事になりませんように。

追記:内閣官房のHPには、次のような文章があった。「我が国において、現在、流行が認められている状況ではありません」とあるが、感染経路が分からない患者がいるのだから、流行しているのではないか?政府が本当のことを言っていないという疑心暗鬼が、不安を増幅する。さらに、流行が認められる状況になってから止める方がよほど困難なのだから、流行する前にできる限りのことをした方がよいと思うのだが。

PSG Group (Piet Mouton)インタビューを聞いて

スイスの投資家、Rob Vinallという方をご存知でしょうか?RV Capitalという長期集中投資ファンドを1人で運用しており、バフェットさんやマンガ―さんと同様、私が理想とする運用体制を実践している方です。

Robさんは毎年スイスで年次総会を開いているのですが、そのyoutube動画は学びが多くお薦めです。2020年の動画が公開されているのですが、中でも南アフリカのPSG Groupという持ち株会社の2代目社長、Piet Moutonさんとの対談が印象に残りました。PSG Groupは南アフリカ最大の銀行、Capitec Bankなどを保有していますが、事業の立ち上げ段階から投資している点でユニークです。まだ海のものとも山のものとも分からない案件の中から、どのように選別しているのか、という質問にたいしてこう答えていました。

1、大きな潜在市場規模。小さい企業を作るのも、大きな企業を作るのも、手間は変わらない。となれば、成功した時のアップサイドが大きい分野、つまりは潜在市場規模の大きな分野を選びたい。例えば、金融、教育、エネルギーなど。

2、弱い既存プレイヤー。既存プレイヤーが怠惰な分野を好んでいる。政府サービスを代替することも魅力的(教育分野で実践中)。なぜ、後発銀行であるCapitec Bankがこれほど伸びたか。例えば、南アフリカの既存銀行の窓口は平日9時から15時までしか空いていなかった(日本の銀行と同じ。。。)し、中心部にばかり店舗があって、労働者にはアクセスが悪かった。Capitec Bankは、月~土の朝7時から夜7時まで店舗を開けているし、顧客アクセスの良い地域への出店を心がけた。

3、斬新なコンセプトを持つ経営陣。経営陣が既存プレイヤーと全く異なる発想を持っていることを重視している。例えば、Capitec Bankは小売り業の発想を銀行に持ち込んだ。小売店舗に行けば、店員が「お困りですか」などと声をかけてくる。同様に、Capitec Bankでは支店長が入口の一番近くに座っている。支店長は一番銀行のことを分かっているわけだから、一番に顧客の要望を聞き、適切なサービスに誘導すべきだと考えている。インタビューからは外れますが、Third Placeという発想をカフェに持ち込んだスターバックス、店舗がない小売業というコンセプトのAmazon、サーバーを保有しないというコンセプトのクラウドサービス、確かに大きく伸びた会社は、既存コンセプトをより良く実行するだけではない、斬新な発想を持っていると感じます。

英語にはなりますが、優秀な経営者の考えに触れることができる、素晴らしい動画です。

Robさん、ありがとうございます。

大都市の中のスキー場

トロント都市圏人口は600万人です。東京や大阪など日本の大都市と比べるとだいぶ見劣りしますが、大都市と言って差し支えないと思います。

そんな大都市の中に、なんとスキー場があります。Earl Bales Parkという大きな公園の一部となっている、North York Ski Centreです。リフト1本にコースが3本。高低差も少なく可愛いスキー場ですが、車があれば自宅から10分でスキー場です。

北の大都市ならではの醍醐味。カナダの冬は長く厳しいという評判ですが、長くて厳しい冬ながないとできないこともあります。冬になると街中に突然出現するスケート場もお薦めです。

 

学校ストライキ

2019年8月からオンタリオ州と教師労働組合が労働契約に合意できないでいるそうです。これまで何度か1日ストライキが行われてきましたが、今週からはなんと週2日のストライキ。。。子供は喜んでいたりもしますが、共働き家庭の多いトロントですから、子供の世話にてんてこ舞いでしょう。しかも、トロントでは自立していない子供を自宅に留守番させることができません。明確な年齢規定はないようですが、12歳くらいまではダメでしょう。日本の感覚で留守番させていると、保護者の責任を果たしていないとみなされてしまうそうです。学校のありがたみを感じる2日間になりそうです。

日本では、教師のストライキによって学校が休校になるとは、考えにくいと思います。しかし、オンタリオ州知事が2018年に変わったことで、実生活に目に見える大きな変化が起きています。日本では、誰が区長、知事、首相になっても、教育現場に大きな変化が起きた記憶がありません。教育の継続性という意味では好ましいことですが、政治と実生活の関係性を感じにくい面もあります。財政縮減を公約に掲げる知事を選ぶとこうなるよ、ということで、実に分かりやすいです。そして、ストライキになることで実生活に影響があり、そうなってようやく有権者も政治に関心を持てるのだと感じました。

書評:The Three Rules (by Michael Raynor & Mumtaz Ahmed, 2013)

The Tree Rules: How Exceptional Companies Think

著者について

二人ともデロイトのコンサルティング部門の方です。

内容について

同じ事業領域にある企業を比べると、ずば抜けた企業、良い企業、普通の企業があることが分かる。長期的なROAやROEの推移、長期的な株主リターンを比べてみれば、その差は一目瞭然だ。もちろんずば抜けた企業を長期保有したいわけだが、どうすれば見分けることができるのか?持続的な競争優位性を発揮する企業には、3つの共通点があるというのが本書の主張。

1、Better before cheaper 価格を下げる前に、付加価値を上げることに集中しているか?

2、Revenue before cost 売上を上げることに集中しているか?ROAを上げるためには、売上を上げるか、費用を下げるか、資産を下げるか、の3つの選択肢しかない。ずば抜けた企業は多くの場合、売上を上げることによって、高いROAを維持している。さらに、売上を増やすためには、価格を上げるか、量を上げるかという選択肢になるが、多くの場合、価格を上げることによって増収を達成している。値上げできるということは、つまり#1の付加価値が高いと認められている証拠に他ならない。

3、There are no other rules 3つのルールと言っておきながら、最初の2つ以外にはありません!という話。

まとめ

長期的に繁栄する企業は、価格決定力があることが多いという話。価格決定力を付けるために、付加価値を高める不断の努力を行っているかどうか。そんなことは当たり前だけど、当たり前なことを当たり前に続けることが、どれほど難しいことか。。。

トロント生活:ハロウィーン

10月31日、ハロウィーンがありました。

ハロウィーンの起源は、古代ケルト人の祭りと考えられているようです。夏から冬への境目を、生の世界から死の世界への境目と捉えていたと聞くと、現代人には大げさに聞こえるかもしれませんが、一昔前は、厳しい冬を生き延びることができるか、死活問題だったのです。食料は足りるのか?燃料は足りるのか?冬を迎えるために、不安で仕方なかったと思います。緯度が高いカナダにいると、その実感を持てます。日本では秋の味覚を楽しむ10月ですが、こちらは日が短くなる一方。既に朝8時くらいまで暗いですし、気温も氷点下近くまで下がっています。まさに、10月は夏の終わり。冬の始まりです。(昨日、11月1日の朝には初雪がちらついていました)

ハローウィンの準備として、まずはかぼちゃ。先週末にくり抜きました。29日には小学校で夜に大掛かりなハローウィーンパーティー。31日も小学校に仮装して登校し、朝会兼パーティーがあったそうです。先生方も張り切って仮装してます。校長先生は、大きな孔雀の被り物をしていたそうで、リーダーが率先してやるという姿勢は素晴らしいなと思います。そんな姿勢を見ているからか、子供達も校長先生の名前をよく口にしています。私は日本で小学生をしていました。担任の先生の名前は覚えていますが、校長先生の名前は一人も覚えていませんし、特に印象もありません。

ハローウィン本番の31日夜はあいにくの雨模様。我々は5時半ごろから繰り出し、前の通りを往復して6時半には終了。かぼちゃが出ているか、ポーチのあかりがついていれば、ノックしてOKというルールだそうです。25軒ほど回って、50個くらいお菓子をゲットしていました。うちにも次々と子供がノックしてきてくれて、待つ側も楽しいもの。誰だろう?どんな仮装だろう?見知らぬ他人が家に来ることは普段ないわけですから、非日常を体験できます。そして、来るのは近所の子。現代のハロウィーンとは、地域親交のための行事なんだな、と感じました。

ケチャップ戦線

昨日のマヨネーズ価格比較に続き、今日は近隣店舗のケチャップ価格比較です。

ローソン売場の写真です。

裏面を見ると、、、

カゴメ純正商品の隣に、カゴメが作ったPB商品が並んでいました。

同じ会社(カゴメ)が、同じ工場(小坂井工場)で、同じ原材料で作っているとなると、私は,「同じじゃん!」と安いほうのPB商品を買ってしまいますが、多くの消費者はどういう行動をするのでしょうか?

カゴメブランド故の価格差は、いつまで維持できるのでしょうか?

街中には、考える材料が溢れています。

Happy Investing!!

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マヨネーズ戦線

店舗調査

昨日、コンビニおけるPB商品の増加について投稿しました。

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セブンイレブンを見た考察でしたが、他の店舗ではどうなっているのか、マヨネーズ探偵気分で調査してきました。

調査結果

東京の中野~高円寺駅周辺の価格で、他地域では、価格が異なっているかもしれません。

また、コストコは近くに店舗がないため、ネット検索結果になります。

最高値は、ファミマのキューピー350g入り、100gあたり81円。

最安値は、業務スーパーのPB商品、1kg入り、100gあたり28円と約3倍の価格差がありました。

同じキューピーブランドでも、ファミマの100gあたり81円からドンキの100gあたり40円まで2倍の価格差がありました。

考察

コンビニを比較すると、セブンのPB商品の安さが目につきます。

一方、ファミマはPBマヨネーズを展開していない。

系列スーパーのイトーヨーカドーと、同価格でPBマヨネーズを販売するセブンイレブンに、PB商品を強く推し進めようという意思を感じました。

「セブンでPBを買えば、スーパーと同等に安いですよ」、というメッセージは強力だなと思いました。

最大の興味は、ブランドがどこまで価格を維持できるか、という点です。

Happy Investing!!

 

 

PB商品に感じる、メーカーと小売店の力関係

コンビニ探索

私はコンビニ探索が大好きです。

コンビニという限られた空間に並んでいるのは、売上を最大化すべく選び抜かれた商品たち。

日本全国に約6万店あるコンビニに売場を確保することは、食品メーカーにとって大きなチャンスとなります。

↑ コンビニ店舗数推移(店)
(出典:http://www.garbagenews.net/archives/2392411.html)

マヨネーズ売場

例えば、セブンイレブンのマヨネーズ売場には、大小5つの商品が並んでいました。

・セブンイレブン PB商品 (大、小)
・キューピー (大、小)
・味の素 ピュアセレクト

裏を見て驚いたのは、セブンイレブンPB商品を、クノール(味の素)が作っていることです。

しかも、セブンPB商品の方が、価格が安い。。。

今はまだブランド価値で価格差を維持できているようですが、同じ会社が作っているという認識が広まれば、価格の安い方を買おうという流れが強くなると予想します。

ブランドだから信頼して買おう、という世界から、セブンイレブンにあるPB商品だから信頼して買おう、という世界にシフトしているように感じます。

付加価値が、ブランドからセブンイレブンに移転している可能性があり、食品メーカーにとっては厳しい状況かなと想像しました。

イノベーションの差

過去20年の食品メーカーとコンビニのイノベーションを比べると、競争優位性の移転も仕方ないのかなと思います。

私の知る限り、キューピーはひたすらマヨネーズを作ってきました。

国内では過半シェアを取ったあとのイノベーションは、スケールメリットを追求するために、買収 or 海外展開 するか、ブランドを他商品(ドレッシングとか)に展開するか。

しかし、海外展開に早期に取り組み結果を出したキッコーマンの醤油と違い、海外で日本のマヨネーズを見ることは少ないです。

一方のセブンイレブンは、店舗網の拡大+スーパー買収などで、年々販売能力を高めてきました。

その増大する販売力をもって、メーカー交渉で優位に立つことはもちろん、さらにPB商品に進出している訳です。

小さな個人商店しかなかった時代は、店に販売力・信用力がなく、商品ブランドが効果を発揮したと想像します。

しかし、店に販売力・信用力が付いてしまった状況になって、競争優位性の前提が崩れてしまったのかもしれません。

結局のところ、競争優位性を維持・拡大できない企業の収益性は長期的に低下していきます。

目の前にある事実の変遷を自分なりに理解し、将来の道筋を考えるのは、とても面白い。

私は投資が大好きです。

Happy Investing!!